拡大新生児スクリーニング検査の対象疾患
<対象疾患一覧> (名前をクリックすると詳細に飛びます)
・ポンペ病
・ゴーシェ病
・ファブリー病
・ムコ多糖症Ⅰ型
・ムコ多糖症Ⅱ型
・脊髄性筋萎縮症 (SMA)
・重症複合免疫不全症 (SCID)
・ポンペ病
ライソゾーム(細胞内小器官と呼ばれる構造物の1つで、様々な種類の酵素が存在し、体内にとって不要となった物質を分解し掃除する働きがある)の中の、酸性αグルコシダーゼという酵素の働きが生まれつき低くなっているため、グリコーゲンという物質が分解されにくくなり、全身のいろんな臓器の細胞にたまって、様々な症状を引き起こします。患者さんは4万人に1人と推定されています。 主な症状 筋力の低下、成長・発達の遅れ、心機能障害、呼吸困難、呼吸器感染症、誤嚥性肺炎、頭痛、腰痛など 具体的な症状 ・身体を支える筋肉の力が弱くなるため、寝返り、おすわり、はいはい、歩行などの運動機能の発達に遅れがみられます。 ・呼吸をするときに必要な筋力が低下し、呼吸しにくくなることがあります。眠っている間に時々呼吸が止まってしまうため(睡眠時無呼吸症候群)、起床時に頭痛があることがあります。 ・心臓が大きくなって、不整脈や心不全などを起こすことがあります。最も重症なタイプだと、心臓の筋肉も壊され、心機能が低下し、治療を行わないと2歳までに死亡する可能性が高くなります。 ・食べ物を飲み込むときに必要な筋肉が弱く、食べ物が気管に入って肺炎を起こすことがあります。 早期発見することの重要性 症状が出る前より治療を開始することで、生存率が改善するだけでなく、人工呼吸器を必要としない通常の生活ができる可能性が高くなり、運動発達の遅れも改善することがわかっています。・ゴーシェ病
ライソゾームの中のグルコセレブロシダーゼというこそが生まれつき低くなっているため、グルコセレブロシドという物質が分解されにくくなり、肝臓や脾臓、骨髄などにたまって、様々な症状を引き起こします。 主な症状 けいれん、斜視、口が開けにくい、肝臓や脾臓が大きくなる、骨の痛みや変形、骨折しやすい、出血しやすい、血が止まりにくい、貧血、成長の遅れなど 具体的な症状 ・肝臓や脾臓が腫れて、見た目にもわかるほどお腹が大きくなります。 ・貧血により疲れやすくなります。 ・血小板数が低下し、出血しやすくなります。 ・骨が弱く、変形しやすくなり、場合によっては骨がとても痛くなったり骨折を起こしやすくなります。 ・病気のタイプによっては、けいれんなどの神経症状を伴うことがあります。 早期発見することの重要性 症状が出る前に診断し、治療を開始することで、症状を軽くしたり、進行を抑えることが出来る可能性が高くなります。・ファブリー病
ライソゾームの中のαガラクトシダーゼという酵素の働きが生まれつき低くなっているため、グロボトリアオシルセラミドという物質が分解されにくくなり、全身のいろんな臓器の細胞にたまって、さまざまな症状を引き起こします。患者さんは7,000人に1人と推定されています。 主な症状 特徴的な症状として、汗をかきにくい、皮膚の赤い発疹、手足の痛みがあります。 そのほかに、心機能障害、腎機能障害、脳血管障害、消化器症状、難聴などがあります。 具体的な症状 ・手足の先に痛みやしびれを感じます。気温の変化や運動によって引き起こされることがあり、暑い夏やお風呂、運動が苦手だったりします。時々、発作的に激しい痛みが出ることがあります。 ・汗をかきにくくなるため、体温の調節が難しく、発熱しやすくなります。 ・腹痛や下痢などの胃腸の症状が出やすくなります。 ・おなかやおしり、陰部、太ももなどに小さな赤い発疹がでます。痛みやかゆみはありません。 ・大人になると、心機能障害や腎機能障害、脳血管障害や難聴などが起こりやすくなります。 早期発見することの重要性 心臓や腎臓の機能障害、脳血管障害が進行してしまってから治療を開始してもあまり有効でないため、早期に診断し、治療する必要があります。・ムコ多糖症Ⅰ型
ライソゾームの中のα-L-イズロニダーゼという酵素の働きが生まれつき低くなっているため、グリコサミノグリカンという物質が分解されにくくなり、全身の骨や筋肉、内臓などの組織にたまって、角膜混濁や特徴的顔貌などさまざまな症状を引き起こします。患者さんは10万人に1人と推定されています。 主な症状 特徴的な顔貌、低身長、臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、繰り返す中耳炎、角膜混濁、緑内障、蒙古斑、肝臓や脾臓が大きくなる、骨関節の変形、関節拘縮、精神運動発達の遅れ、心臓弁膜症など 具体的な症状 ・頭が大きい、首が短い、舌が大きい、唇が厚いなど、特徴的な顔貌がみられます。 ・臍ヘルニアや鼠径ヘルニアになりやすくなります。 ・角膜混濁による視力低下や、難聴、中耳炎を繰り返すようになります。 ・からだ全体に蒙古斑がみられることがあります。 ・肝臓や脾臓がおおきくなるため、お腹がぽっこりします。 ・心臓弁膜症になりやすくなります。 早期発見することの重要性 症状が出る前に診断し、治療を開始することで、症状を軽くしたり、進行を抑えることができる可能性が高くなります。・ムコ多糖症Ⅱ型
ライソゾームの中のイズロン酸-2-スルファターゼという酵素の働きが生まれつき低くなっているため、グリコサミノグリカンという物質が分解されにくくなり、全身の骨や筋肉、内臓などの組織にたまって、関節症状や骨病変などさまざまな症状を引き起こします。患者さんは5万人に1人と推定されています。 主な症状 幼児期の急激な成長、発語の遅れ、臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、繰り返す中耳炎、蒙古斑、肝臓や脾臓が大きくなる、骨や関節の変形、関節拘縮、精神運動発達の遅れ、心臓弁膜症など 具体的な症状 ・幼児期に急激に成長し、大きな鼻や厚い唇、大きな舌、歯肉の腫脹、耳たぶが硬く厚いなどの特徴があります。 ・臍ヘルニア、鼠径ヘルニアになりやすくなります。 ・からだ全体に蒙古斑がみられることがあります。 ・肝臓や脾臓が大きくなるため、お腹がぽっこりします。 ・心臓弁膜症になりやすくなります。 早期発見することの重要性 症状が出る前に診断し、治療を開始することで、症状を軽くしたり、進行を抑えることが出来る可能性が高くなります。・脊髄性筋萎縮症(SMA)
SMN蛋白を十分に産生することができないため脊髄の前角細胞(運動神経)が変性し、進行性の筋力低下、筋萎縮を引き起こす疾患です。重症型の場合、乳児期に運動発達がとまり、哺乳や食べ物ののみ込み、呼吸ができなくなるなどの症状を引き起こすことがあります。 主な症状 弱い泣き声、哺乳困難、呼吸困難、嚥下困難、四肢や体幹の筋力低下、成長の遅れなど 具体的な症状 ・全身に筋力低下がみられ、首がすわらない、お座りが出来ないなど、運動発達に遅れがみられることがあります。 ・呼吸するときに必要な筋肉が弱いため、咳の力が弱い、呼吸が浅く弱いことがあります。 ・母乳やミルクを飲めない、誤嚥を起こしやすいなどの嚥下障害がみられることがあります。 早期発見することの重要性 症状が出現する前に診断し、治療を開始することで、症状を軽くしたり、進行を抑えることができる可能性が高くなります。最近の治療の進歩が特に著しく、早期治療開始により、ひとり歩きが可能になった症例もでてきています。・重症複合免疫不全症(SCID)
生まれつきの免疫系の異常により、血液中の免疫にかかわる細胞であるTリンパ球がほとんど存在せず、病原体に対する抗体を作るBリンパ球も機能しなくなることで、病原体から身体を守ることが出来ず、重い感染症を繰り返す病気です。患者さんは5万人に1人と推定されています。 主な症状 肺炎、下痢、口腔内カンジダ、中耳炎、敗血症、生ワクチン(ロタウイルスワクチン、BCGワクチンなど)に対する重い副作用など 具体的な症状 ・乳児期早期に、肺炎、敗血症、胃腸炎などの重い感染症を繰り返すことがあります。 ・慢性の下痢・旧障害のために、体重の増えが悪くなることがあります。 ・診断前に重い肺炎や敗血症にかかり、適切な治療が受けられないまま亡くなられてしまうことがあります。 ・重症複合免疫不全症の赤ちゃんに、生ワクチン(ロタウイルスワクチン、BCGワクチンなど)を接種してしまうと、命にかかわる重い副作用を引き起こす可能性があります。 早期発見することの重要性 重い感染症にかかることを未然に防ぐ事ができます。また、それによって、根治治療である造血幹細胞移植の成功率を上げる効果もあります。