当科のご案内

2012年 高知大学医学部 小児思春期医学教室日記

2012年 高知大学医学部 小児思春期医学教室日記

第44回日本小児感染症学会総会に参加して参りました。今年は11月24日、25日の日程で、九州大学小児科主催のもと北九州市での開催となりました。
学会前日に行われた教育セミナーから参加させていただきました。

「小児感染免疫up to date」と題して、感染防御機構の基本から近年明らかとなってきたIRAK4欠損症、MyD88欠損症などの免疫不全症の解説まで、非常にわかりやすくおもしろいセミナーでした。 学会初日の朝は、「危急感染症と発熱疾患のトリアージ」をテーマとしたワークショップに参加しました。中でも一番印象に残ったのは、バイタルサインの基準値に関する最近の知見です。

日常の診療で用いるにはある程度の簡便さが必要ですが、より見落としの少ない基準値の設定を期待したいと思います。同日のランチョンセミナーでは、藤枝教授がロタウイルス性胃腸炎に関連した両側尿路結石による腎後性腎不全について講演されました。結石(酸性尿酸アンモニウム結石)の形成機序の推察、結石が生じた症例の特徴、そして形成機序解明に向けた今後の展望について盛りだくさんの内容をお話しされました。同日の夜には、大阪医科大学の同門の先生方、高知大学の同門の先生方とお酒と食事を囲んで交流しました(写真)。北九州で食べる焼きふくはおいしく、会話も弾み楽しいひと時を過ごさせていただきました。 2日目は、朝から同門の森下祐介先生がO-157感染症の生後1か月の女児例を、佐藤哲也先生がO-157による溶血性尿毒素症症候群の経過中に急性膵炎を合併した例を発表されました。知識を深めることに加えて他病院の先生方とも交流でき、有意義な3日間を過ごすことができました。

雑考~第47回日本腎臓病学会に参加して~ (森田 拓)

私が小児腎臓病学会に参加したのは今から10年前の第37回でした。初参加した時は発表される内容が理解できず、大会で買った教科書を広げながら四苦八苦したのを昨日のように思い出します。 今大会のテーマは「リサーチマインド」を会長の服部元史先生が挙げられ、それにふさわしい深いdiscussionの多い学会だったと思います。小児腎臓病学会は元々リベラルな空気が強く、発表者に対して建設的な質問や提言が多い学会でありますが、今回は特にその傾向が強かったように感じました。  当科からは私が「開窓Fontan術後進行する腎不全のため10歳台で腹膜透析を導入したAlport症候群疑いの女児例」、石原先生が「生後1か月で両側腎石灰化のみられた遠位尿細管性アシドーシスの男児例」を発表しました。いつもこの症例は珍しいだろうなと思って学会に持っていくのですが、全国学会になると「うちにも同じような患者さんがいる」「私のところではこう対応した」等の意見が必ず出てきます。文献には出てこない生の治療者の声を聴けて大変参考になりました。

そして学会に行っていつも思うのは、臨床研究は大事だなということです。今大会でも活躍中の先生方が素晴らしい発表をされておりましたが、その根底にあるのが「何故この病気は起きるのか」「なぜこの患者さんではこの検査値異常が起きるのか」を一つ一つ丁寧に考察し、調査をすることでした。私は大学院生活終了後、小さな市中病院で基礎研究と縁遠い生活をしております。慣れに甘え、ついつい普段の診療で安易な対応に流されていないか、わが身を振り帰り反省しております。

また学会では普段会えない他地方の先生方とお話できます。色々な話をしながら何かのときにお互い協力できる関係を作るのも学会の功能ではないかと思います。

最後に、発表を指導していただいた藤枝先生及び症例患者さんの診療時にご助力いただきました各先生方に御礼申し上げます。ありがとうございました。

4月20日(金)~22日(日)第115回日本小児科学会学術集会(福岡) (大石 拓)

日本小児科学会総会に出席して参りました。当科からは藤枝教授と私の二人の参加になりました。

2日目に、私(大石)が、50,000人に1人という非常にまれなX-linked myotubular myopathyの1例を発表してきました。本症例では新生児期に乳び胸を認めました。新生児期の乳び胸は、先天性筋緊張性ジストロフィーでの報告を多く認めていますが、本疾患での報告は海外で1例しかありません。今後の診断の手掛かりになればと思い報告して参りました。今回はSubspeciality(アレルギー)と異なりましたが、時には専門分野以外の分野を聴講して勉強してみるのも新鮮で良いものであると思いました(写真がなくてすみません)。

3日目に藤枝教授が、抗血管内皮細胞抗体の一つ、抗Peroxiredoxin2(Prx2)抗体と川崎病(KD)との関わりについてご発表をされました。KD例では、本抗体がコントロール群や敗血症群に比し有意に高く、KD群内での有熱期間・γグロブリン不応例・冠動脈病変例との関わりも強く示唆する抗体であることを示されました(写真)。

また、初日に、幡多けんみん病院の臼井大介先生が、静岡てんかん・神経医療センターでご経験された精神発達遅滞とてんかんを示した2番染色体長腕部分重複の一例を発表されました。

加えて、現在、初期研修2年目の長尾佳樹先生も全日参加で熱心に勉強されており、小児科医への意気込みは見上げたものと関心しました。同門の先生方では、高知から小倉英郎先生、武市知己先生、小谷治子先生、森澤 豊先生、濵渦正司先生が出席されていました(漏れがありましたらお許しください)。

夜のdiscussionとして、初日(4/20)の夜には、藤枝教授、長尾先生および私の3人が、大阪医科大学小児科教授 玉井 浩先生(土佐高校出身)、同じく腎臓グループチーフ芦田 明先生、東京女子医科大学腎臓病センター 腎臓小児科教授 服部元史先生とご一緒にお酒を飲ませていただきました。博多の夜景が大変美しいところで、高知の今と昔についてお話できたりと楽しいひと時でした。また、2日目の夜は、私達3人と幡多けんみん病院の前田明彦先生と臼井大介先生の計5人で博多名物のもつ鍋で乾杯しました(写真)。 

Gillberg Neuropsychiatry Centre(GNC)を訪問して (細川卓利,満田直美)

2012年3月18日から25日まで、Sweden GothenburgのGNC で開催された1st GNC International Weekに出席しました。Glasgow、Bergen、Gothenburg、日本のGNC研究員が一堂に会し、各国の研究プロジェクトが発表されました。我々、日本人研究員からは、細川先生が’The evaluation about cognitive functions and the questionnaires on developmental disabilities in children with epilepsy’について発表した他、高知県立療育福祉センターの畠中雄平先生、環境医学教室の安光ラヴェル香保子さんがそれぞれ発表しました。他のメンバーは、GNCのChristopher Gillberg教授、Elisabeth Fernell教授と個々の研究プロジェクトについて個別に討論し有益な助言を得られるなど、今後の研究発展に繋がる有意義なミーティングとなりました。

3月には例年は雪が降り、川面も凍結していることが多いGothenburgですが、今回の滞在中は4月中旬の温暖な日々が続き、ミーティングの合間にはホテル周辺をランニングして景色を楽しむことが出来ました。ある時は走りながら、またある時はスウェーデン料理を頂きながら、同行の先生方と日々の診療や研究、将来の展望などについて語り合い、沢山の助言をいただけたのも大きな収穫でした。

平成24年度から高知ギルバーグ発達神経精神医学センターが正式に始動します。これまでの長い準備期間に培った人脈、研究員相互の知識共有、経験の蓄積を生かしてメンバー一丸となり、高知ギルバーグセンター設立の本来の目的である高知県全体の発達障害診療のレベルアップと支援充実のために、今後も研鑽を積んでいかねばなりません。

最後になりますが、年度末の何かと多忙な時期に訪問を許可してくださった脇口宏教授、藤枝幹也准教授をはじめ、小児科の先生方に御礼申し上げます。また、イエーテボリ訪問中は私の拙い英語のアシストを始め、数々のサポートをして下さいました高知ギルバーグ発達神経精神医学センター長の畠中雄平先生、同行の先生方には本当にお世話になりました。
ありがとうございました。